天徳寺慈しみ基金視察と追善供養の報告(2009年北タイ視察報告)

北タイの山岳民族の子供支援事業と追善供養のため12月21日~25日に総勢14人の参加者と共に現地に赴きました。初日にはチェンマイ市内にあるデック財団が行っているストリートチルドレンの支援事業を視察しました。現在北タイ全土またチェンマイ市内にどのくらいのストリートチルドレンがいるかは把握されていないのですが、この財団ではチェンマイ市内で年間500人程度のストリートチルドレンの世話をしたとのこと。この子どもの多くがミャンマーとの国境に近い山岳から親と共に流れてきたとのこと。山での生活が困窮することと、それゆえ高価に売買される麻薬のけしの栽培に従事するが故に、本人も麻薬中毒になり働けない状態になり、山の村で生活できなくなり、家族で、あるいは中毒の夫を見捨てて妻と子供だけで、あるいはひとりでチェンマイに仕事を求めて流れてくるということです。ストリートチルドレンの多くには両親や片親がいるのですが、その親も路上生活者だそうです。夜になると10歳に満たない子どもが路上で花売りをする光景が見られます。昼間は仕事がないため、市内でうろうろしています。そのような子ども達の緊急避難施設「ドロップインセンター」をまず視察しました。


左の写真のように三階建ての簡素なビルの一角を借りて、そこで食事の提供をします。右の写真は内部の様子です。子どもたちの書いた絵が飾ってありました。日本の児童館の様子に似ています。それと同時に健康状態の把握、家族の動向、教育の提供、教育機関、就職の斡旋等をします。
 
次に訪問したのが、この財団が運営する工芸品ショップです。下の左側の写真はショップの入口、中央はショップ内の様子。ここは子ども達が夜の危ない仕事から解放されるようにお菓子や民芸品等の製作のための職業訓練を施し、その作品を販売するお店です。年間100万円程度売れるとのことです。天徳寺でもTシャツとバックを20個ほど購入しました。本堂脇で販売しています。なお、この財団に日本から持ち寄った古着を寄贈しました。それが左の写真。チェンマイの夜は結構冷えるので、子どもや親に喜ばれるとのこと。


次に訪問したのがこの財団が運営する養護施設です。チェンマイ市内から車で40分程度の郊外の田園地帯にあります。左の写真がここで生活をする子供たちです。わざわざ市内から離れているのは子どもが容易に市内の親元に帰らないため、容易に親が仕事をさせるために連れ戻さないため、自然の中での生活と学校の環境が良いためだそうです。この施設に現在26人の小学生、中学生が暮らしています。

お世話するスタッフは3人。路上生活の子どももここに来ると子どもらしさを取り戻せるのでしょう。左下の写真が施設全体、右下の写真が子供の寝室。この施設には4つの建物があり男女別の子どもの寝床と視察にくるお客さん用のゲストルームと職業訓練室となっています。つい数年前に日本のロータリークラブと外務省がそれぞれ立てたものです。それはスタッフの中に日本人の女性がいて、彼女が日本国内でアピールしたからです。それまでは簡素な小屋が二つあるだけだったそうです。ここの運営費は年間240万もかかるとのこと。しかし運営費への寄付は集まりにくいため、苦心しているとのこと。天徳寺では慈しみ基金から2万円のカンパをさせていただきました。


下の写真がカンパやお菓子の贈呈後の記念写真です。

次の日にはチェンマイから車で2時間の距離にある町に立つメタム寮と呼ばれる養護施設の見学に赴きました。まずはこの養護施設の集まる子供たちの住む山村の一つを訪問しました。村は簡素な建物が山際に密集するように立てられ、豚や鶏を飼っている家もいくらか見受けられました。左の写真は村からの眺め、右の写真は村の中です。


この村では換金作物としてトウモロコシや生姜を栽培していました。それを商社が1キロ9円で買い取るとのこと。しかしトウモロコシや生姜は突然値段が暴落することも多くて問題が多いのでなるべく多品種の換金作物を栽培するようにメタム寮の代表者であるダイエさんが指導しているとのこと。現在この村の世話役としてダイエさんは農業指導をしています。農業指導が功を奏しており、麻薬が村に入ってくることもなく、村人の生活も貧しいながらも安定した様子でした。

次にむかったのはダイエさんが運営している農業訓練センターです。ここには山村各地から複合農業を学びに山岳民族がやってくるとのこと。左下の写真はダイエさんが養豚の方法をここで教えるとの説明中の写真。中央は魚の養殖場。右下はコーヒーの苗木。


山岳少数民族が貧困から抜け出すためには、麻薬の元であるけしの栽培や換金作物であるトウモロコシや生姜のみに頼らないためには多品種の作物の栽培と豚や牛や鶏の飼育や魚の養殖を各家庭で行う必要があり、それがしいては子どもに教育の機会を与えることにも繋がるとのこと。なお、数年前からコーヒーの栽培も村人に勧めているとのこと。農業訓練センターでもコーヒーの木を数十本栽培していました。その他、マンゴーやパパイアやドリアンといったフルーツの木なども数多く栽培されていました。ただ、この農場にタイ国の支援等はないため、運営が厳しいとのこと。タイでは国籍を持たない場合が多い山岳少数民族の支援は国の仕事ではないらしい。
 
次に向かったのはメタム寮のこどもが通っている町の小学校。この小学校には140人の生徒がいるが、その半数は少数民族である。この小学校には政府から教育用の7台のテレビが送られてきたが、アンテナがないので使えないとのこと。そのため慈しみ基金から7万円の工事費用を寄付しました。 
 
次に向かったのは今回の訪問目的である養護施設メタム寮。小学校から歩いていける距離にありました。この施設もまた数年前の郵便貯金に支援で立てられました。左下は寮施設の2階から取った写真です。後方が寄宿舎で前方が料理場です。


それまでは雨もりのひどい小屋だったそうです。子どもたちが学校から帰ってくる前に肉をたくさん使った野菜炒めを作りました。右上の写真が料理風景です。今回は市場で5種類の野菜と鶏肉を買いました。普段は2品程度の肉なしの野菜炒めだそうです。子どもは54人もいますから、食費がかなりかかるのでしょう。左下の写真にもあるように子どもたちは寮の踊り場でおいしそうに食事をしてくれました。この寮には天徳寺慈しみ基金から毎年50万円の寄付をしています。多分、寮の維持費を出す支援団体の中では最大でしょうが、それでも食事の質素なのはかなしくなります。
 
子供たちにはクリスマスの日とも重なりプレゼントとして文房具を送りました。右下の写真が配るところです。


次に日に北タイで歴史のあるドイテープ寺院に行きました。ここで旅行に同行していただいた埼玉の大円寺のご住職を導師に追善供養を営みました。追善供養をお申し込みなされた方の故人の名前を読み込みさせてご冥福をお祈りいたしました。

今回の視察旅行に際して頂いた寄付は総額75万、寄付者86人となりました。書面にてお礼申し上げます。今後とも天徳寺の供養事業としての慈しみ基金へのご支援宜しくお願い申し上げます。


住職 二神 成尊