天徳寺の里山作り

天徳寺樹木葬 天徳寺の里山作り

天徳寺の所有する杉山は約5町(学校のグランド5個分ぐらい)あります。ほとんどが杉です。約8000本。40年前に雑木をすべて伐採し、植林されました。

 

しかし、その後、間伐をすることもなく、密生した状態で現在に至りました。全国のほとんどの杉山も同様な状況です。間伐がなされない杉山の杉は背丈はあり ますが、細くて根も張りません。それゆえ土を支える力に乏しく、すぐに山崩れを起こします。天徳寺の山でもあちこちで崩れている状況です。

 

さらに未整備の杉が40年も経つと根っこは衰弱し、山崩れを助長します。また、植林の際には挿し木で行われましたので、杉の中が空洞化しやすく、木材とし ての価値を亡くしてしまいます。また、間伐されていない杉林の中は日が当らず、下草が育ちません。雑木のようにどんぐりも落ちません。ですから鳥や昆虫や 小動物がすめないところです。砂漠とおなじく命の育まれない土地です。

 

一見、杉山は自然の豊かさを感じさせますが、実は自然の豊かさとは大きく隔たった荒地なのです。ただし適正に間伐されている杉山は状況は違います。生き物 は生きられない場所ではありますが、根が張り、山崩れを起こしにくく、良質の杉材を提供します。ですから理想的には住宅建設に使われる程度の良質な杉山が 各県にあればよく、日本の杉山の多くは雑木山に戻すのがよいのでしょう。

 

現在、二酸化炭素削減が世界規模での課題とされています。杉山は酸素を供給してくれるありがたい山という主張をする人もいますが、それは現実ではありませ ん。日本のほとんどの杉山は40年以上経ています。杉は20年もすると二酸化炭素の吸収力がほぼなくなります。我々の現在見ている杉山は実は二酸化炭素を 吸収し、酸素を排出してはいないのです。このような専門的な事実はあまり報道されません。このような杉ですが、成長過程で吸収した杉の木の中に二酸化炭素 は蓄えられています。ですから杉が倒壊して、そのままにしていると5年~10年で蓄えられていた二酸化炭素が空気中に放出されます。杉を焼けばせっかく長 期に吸収した二酸化炭素をすぐに空気中に帰してしまうことになります。ですから、チップなどにせず、住宅の材木として長期に使用して、その材木の中に二酸 化炭を封じ込めるのが最も適切な杉の処置方法です。

 

結論からいえば、管理されなかった杉山は伐採し、その杉材を住宅材等に使用し、伐採した後に雑木を植えて、成長過程にあるその雑木により二酸化炭素を旺盛 に吸収させ、さらに山崩れを防ぎ、さらに動植物の命が育まれる環境を作り、雑木も完全に成長しおわる時期(約20年)に伐採をしてその雑木を木材等として 利用することが今必要なことです。

 

天徳寺では里山作りを以上の論点を考慮して行います。約5町の杉山(約8000本)の杉を100年ですべて雑木(少々の杉も含む)に切り替える計画です。 伐採した杉は寺内の建物に使い、コナラ、クヌギ、サクラ、ケヤキ等の雑木を約2千本植樹します。約100年の植林計画を実行するためには財源が必要となり ます。樹木葬の運営はそれを実現可能にするものです。700名の会員による基金を財源として100年の事業は安定的になります。後5年を目標としておりま す。そのためしばらくの間、植林地域の一部を樹木葬地として使用していきます。

 

樹木葬地には里山には不適切な樹木も認めています。たとえば西洋シャクナゲや花ミズキです。これらは当然外来種で日本の里山には分布していません。しかし 故人の強い希望があれば、しゃくし定規に否定するものではありません。環境保護はあくまで人の幸いのためのものでなくてはいけません。天徳寺では100年 後にむけて里山を完成させていく計画ですから、たとえば花ミズキは80年で寿命が来ます。そののちにはコナラ等が植えられます。里山は急いで作ってもその 後の長期の管理体制がなければ意味を持ちません。

昨年度は約半町の杉林を伐採しました。手前の平坦な部分を樹木葬地として利用し、後方斜面を雑木山として整備していきます。これが自然のためには最も必要なこととはわかっているのですが、丸裸の伐採地を見ると、なんだか自然破壊をしているような気分です。

間伐されなかった杉山は台風等で容易に倒壊します。間伐された杉や雑木はそのようなことがありません。倒壊したこの杉にはたくさんの二酸化炭素が封じ込められています。

間伐されなかったため倒壊した杉の根は細く横にも下にも張り出されていません。

伐採した区域の上部はシイ、カシの木の雑木林です。この雑木もすでに40年以上経ており、二酸化炭素を少量しか吸収しません。そのため伐採して、しいたけの原木や材木や薪等に利用します。伐採しても深い根が地下では生きていますから、山が崩れることはありません。もうあちこちが緑を取り戻しています。


伐採した雑木からはもう旺盛に枝がたち上がりました。挿し木で植林した杉の切り株からはこのようなヒコバエが出ることはありません。この成長期に特にたくさんの二酸化炭素を吸収し、酸素を放出します。


伐採した木材は一か所に集めます。
伐採した木材は一か所に集めます。
住職が機械操作して材木を製材所へ
住職が機械操作して材木を製材所へ

製材された材木を本堂脇で乾燥
製材された材木を本堂脇で乾燥
寺の加工所でカンナかけ
寺の加工所でカンナかけ


製材し乾燥させて材木で家を作ります。窓枠もすべて杉を使います。たとえば窓枠をアルミニュームにすると天徳寺の窓数15個の場合、輸送エネルギー等を含めて約8千kgの二酸化炭素を放出することになります。この数字は世帯の2年間二酸化炭素放出量するものです。杉材でこの放出量を吸収するには約800本必要となります。

室内も杉板を張り、石油製の断熱材や防水紙は一切使用しません。もちろん壁紙も張りません。

外壁には柿渋を塗ります。


ベランダにもアルミは使いませんでした。ベランダをアルミにすると、なんと杉材1500本が一年間、二酸化炭素を吸収しなくてはいけません。1500本とは学校のグランド1.5個分ぐらいです。1500本の植林は大変な苦労を要します。

 

一般住宅の場合、ほとんど石油製品を元にした材料で作ります。さらに遠方からの材料の輸送でかなりのエネルギーを使います。天徳寺の今回の庫裏建設で、一般的住宅建設に際し放出する膨大な二酸化炭素量をかなり抑えました。これは成長過程にある樹木の約5千本が一年間に吸収する二酸化炭素量に匹敵するものでしょう。