令和6年上半期天徳寺慈しみ基金活動報告

インド子ども支援事業

今回はインドでの塾の運営でお世話になっているアヌープさん、百瀬さんの新しい活動をお知らせしたいと思います。ブッタガヤで無料の学校を開き、子供たちにきちんとした栄養を給食でとってもらい、学習の機会を与えています。その子たちが大きくなって、学校を卒業する時にどんな就業の機会を与えることが出来るのか模索していた時に日本での介護施設のご縁が出来、日本語を学んだインドの若者たちが、研修生として昨年の12月に来日しました。その中の一人。ピンキーさんをご紹介したいと思います。

 

 

 

ピンキーさんとクシュリナ氏
ピンキーさんとクシュリナ氏

 プレマメッタ日本語学校は、設立時にわずか12名の実習生しかおらず、学校は生徒の不足を補うために新聞広告を出し、日本の要望で女性限定の技能実習生を募集しました。その広告を見たご主人のクリシュナ氏にすすめられて来たのがピンキーさんです。ピンキーさんは入学試験を受けたときは27歳、二児の母で、日本語も英語もできませんでしたが看護の勉強をされ資格を持っていました。百瀬さんが初めて会った時には口かずが少なく静かで、既婚女性が着るサリーを着てクリシュナ氏の隣にいました。日本語のことも日本のことも、技能実習ということも知らない彼女に、私は本当に彼女が学びたいという意志をもっているのか疑問に感じていました。クリシュナ氏になぜ奥様を応募させようと思ったのかを聞くと、「彼女は看護の勉強をしたけれどここではその経験を活かせない。日本語を学び、日本で介護職のスキルも学べるこの機会を自分が得たいが男性なので、できない。女性である彼女がこの機会を得られたら素晴らしいと思った。子どもたちの将来にも良い影響がでると思う」と話してくれました。ピンキーさんは入学試験に合格し、プレマメッタ日本語学校で学生としての生活が始まりました。

 ピンキーさんは週5日、8時間もの教室での授業を受ける生活に挑みました。また家に帰ればすぐに夜ご飯の支度など家事に追われ宿題をやる時間もなく、ひらがな、カタカナ、漢字を覚えるのも大変そうでした。家で勉強する時間がないことや、交通渋滞が多い道なので学校に遅刻しないために毎日朝7時頃、2時間も前に学校に来て教室に1人で座り勉強をしていました。学校への通学にはバイクで1時間以上かかる道を毎日夫のクシュリナさんが送り迎えをしていました。

 彼女の学ぶ姿には感動を覚えましたが、村の価値観やご両親の反対もありました。しかし、クリシュナ氏は「僕は彼女の旦那で、僕が良いといっているのだから誰が何を言おうと関係ない。彼女の勉強を応援する。」と 妻の学ぶ姿を全面的に支援し、応援する姿が彼女の頑張りにもつながったと思います。

 

 ピンキーさんは日本語能力試験のN4レベル合格を目指しましたが、最初は難しい道のりでした。しかし、彼女は決して諦めず、クラスメイトたちも諦めず、必ず一緒に日本へ行こうと彼女の勉強を応援し手伝い、休みの日にも一緒に学校に来て勉強を教えていました。そして日本へ行けるかどうか、最後のチャンスとなる試験を受験し、結果が発表された時には本人よりも先にクラスメイト達から「合格した」と伝えられたときにはどれほどみんなが彼女たちのことを想っていたのかがうかがえました。もう一人、N4を取得できない生徒がいましたがその生徒も見事合格、1人残らず全員で日本へ行けると喜びを分かちあっていました。みんなの優しさと、諦めないということの大切さを学びました。ピンキーさんは今、日本でとても元気に働いています。職場の介護施設では利用者さんや先輩方から「日本語が上手だね」と褒められているそうです。はじめてあった時よりハキハキ、イキイキしている彼女を見ると、百瀬さんはこの事業に関わってよかったと心の底から思ったそうです。