平成29年度下半期 天徳寺慈しみ基金活動報告(海外)

団体代表と打ち合わせ
団体代表と打ち合わせ

 10月にインドのブッタガヤ郊外の支援している村(ラフールナガール村とムラタル村)、またカルカッタにある巨大な売春街内で女性支援活動をしている団体、カルカッタ郊外の農村からさらわれた少女を売春街から救出して、村に返す活動をしている団体を訪問と資金支援をしてきました。

1. インド困窮農村児童支援事業

楽しそうに縫製トレーニング中
楽しそうに縫製トレーニング中

A, 縫製トレーニング事業 ラフールナガール村
 昨年度から13~18歳程度の女子を対象に縫製トレーニングを開始し、1年と半年が経ちました。現在21人が縫製の指導を受けています。
 但し、半年前に卒業した女性のうち,2人は今でもトレーニングセンターに来て、更なる技術向上を目指していました。この村で縫製トレーニングが始まる前は、少女たちは大勢の同世代で集まることもありませんでしたが、この事業を始めてから、その機会が得られ、また、家事や農作業だけに明け暮れる生活から、労働から解放される機会を得られることもあり、縫製トレーニングは技術の習得だけでない、楽しい時間になっているようです。縫製のトレーニングを卒業した3人のうち、1人だけが結婚をしてほかの村に行きました。たまたま私が訪問した時に里帰りしていて、会うことができました。彼女は夫の家族と暮らしているということですが、ミシンを使えるのが彼女だけで、また彼女にすれば高額のミシンを持って嫁入りしたこともあり、今では夫家族、兄弟、親族の服を縫っているということです。
 彼女は縫製の技術を持っていることと、ミシンを持参したことにより、夫の家族たちに重宝がられているということで、家族の間で良い立場を得ていると、感謝されました。

卒業生もまだ教室に通っています
卒業生もまだ教室に通っています

B, 縫製トレーニング事業 モルタル村
 昨年度から25人の生徒を募集して縫製トレーニングを開始しました。今年5月に7人が卒業して、ミシンの贈呈式をしましたが、今回、縫製教室を訪問してみると、渡したはずのミシンが並んでいて、少女たちがトレーニングを行っていました。話を聞いてみると、現在17人の生徒がいるため、トレーニングをするのにミシンがたくさんあると助かるという先生の判断で、ミシンをまだ卒業家庭に持っていかせていないとのこと、そのため、今回、新たに教室用にミシンを7台購入し、卒業生の家庭にミシンを運ばせました。

ミシンが家にやって来た
ミシンが家にやって来た

 7人の家庭を訪問してみると、どこの家庭でも、誰もミシンを使えないという事です。その中で大家族の服を作れる卒業生は、家族の中で、役に立つ子として、立場が良くなることを期待します。
 今後はミシンを家族の服を作ることだけでなく、仕事として少しでも家族を経済的に支えられるように出来るか、模索していきたいと思います。

C,古着の販売ビジネス
 村人に市場で古着の販売をしてもらい、小作以外の就業の道を目指す計画をし、天徳寺関係者の皆様からたくさんのTシャツを寄付して頂きました。

古着売りの三人
古着売りの三人

販売が軌道に乗れば、村人が自ら古着をインド国内で仕入れて、それを販売することで、自立できるようになるのが目的です。今年3月の訪問の際に3人の少女に町での販売の指導をしました。その後、彼女たちは古着を意欲的に売っていたかどうかの調査をしました。そこで分かったことは、村からほとんど外に出る機会のない少女たちにとって、町に行くだけでも緊張するのに、売り子をするという事にかなりの抵抗があったらしく、300枚程度しか売り上げてはいませんでした。

古着を売りたいという男の子
古着を売りたいという男の子

この村での女性の現金収入は1か月に2000円程度(耕作の手伝い)ですから、1着100円で売れる古着はかなり良い収入源となるのですが、少女たちが町やほかの村に行くことを嫌がる為、古着事業は継続困難となりそうでしたが、ミーティングをしているところをのぞきに来た売り子のいとこの男の子(16歳)が、目を輝かせて、「僕が売ってみせる」という言葉で、その子に古着の販売を任せてみることにしました。古着は今後現地で彼女たちに調達してもらうように計画しています。それゆえに現在はTシャツ等の古着の寄付は天徳寺ではしておりません。

2. 人身売買から少女を救う事業

売春婦と団体の活動を掛け持ちしている女性たち
売春婦と団体の活動を掛け持ちしている女性たち

現在、天徳寺ではインドの商業都市ムンバイと首都デリーの売春宿から人身売買された少女を救出し、村に返す活動をしているインドの現地団体への資金協力とアドバイスをしていますが、今回は、インドの三大都市のひとつであるカルカッタの現状を調査しました。その中で、良い活動をしている2団体を今後、支援できるかどうか訪問してみました。1つの団体はドルバン(DMSC)。この団体は、カルカッタの町中に公然とある巨大な売春街(そこには約1万人の売春婦がいます)で売春婦の為の病院と、売春婦の為の低利で資金を融資する協同組合銀行と様々な事情で生んだ売春婦の子ども(ほぼ母子家庭)の教育や就業支援を売春婦が中心となってしています。また、この売春街に売られた子どもを救出する活動や、売春街での宿のオーナーへの啓蒙活動をおこなっています。ここの売春婦たちのほとんどは10代の時に、貧しさから親や親せきに売られた、また、拉致されてきた、だまされて連れてこられた場合が大半ですが、今では、この仕事をやめようとすればやめられる立場でありながら、この仕事を続けているとのこと。それは女性が仕事を探し、1人で生きていくことが出来ないインドの現状があるからです。しかし、とにかく売春婦を辞めさせることを活動の中心に置かない活動、売春を温存させている団体の方針は、国内外から批判をうけることも多く、特に海外からの支援がないという事です。

売春婦の為の診療所
売春婦の為の診療所

 ただ売春婦の子どもが、母親の仕事と父親のいない現実、また生活の場が売春宿内の狭い一室、売春街の外にある学校では親の仕事のことでいじめをかならず皆経験するというようなことを、団体の事務所で手伝いをしている20代の男女数人(彼らの母は売春婦)から聞きました。また、この売春街で育った子どもたちは、小さい時から団体の教育を受けて、男性も女性も売春にかかわる仕事には就いていないとのこと。さらには今の子ども達も大きくなったときに、売春にかかわる仕事をしないように、また母親を軽蔑しないように教育を青年たちが行っているということです。
 現在、約400人の子どもがこの売春街にいるとのこと。この子どもたちの教育、心のケア、食事等の青年たちの活動に協力してほしいと期待されました。
その際に、子供のための寮があり、そこで生活する子供80人の為の勉強机といすがなく、床で勉強しているということを聴き、購入のための資金支援をしました。今後、ここの子ども達に支援を継続するかどうか、見極めるために来年、再度、この団体を訪問してさらに具体的な子ども支援の活動を調査する予定です。

 

訪問した2つ目の団体
 カルカッタからインド洋に向かって電車で2時間ぐらいのところの町で、人身売買撲滅の活動をしているGGBKという団体を訪問しました。この団体は、以前から天徳寺が支援しているレスキューファンデーション(ムンバイ、デリーに主な拠点を置く)が救出した少女のうち、カルカッタを含む西ベンガル州(人口1億)の南の農村地域に家族がいる場合に、この団体に少女を預けて家族のもとに返すことを依頼しています。救出した後のことが気がかりなため、この団体を調査しました。

救出された少女が結婚して始めた店
救出された少女が結婚して始めた店

それによると、この団体は、少女やその親をだましたり、誘拐して売春宿に売る組織からやってくる男性が村に入れば、村人の監視員がこの団体に通報するように各村を組織しています。監視員は約5000人です。水際で食い止めることもよくあるそうです。また、少女が行方不明になった際に、やはり監視員を通じて、この団体に捜査を依頼し、警察と共に情報収集にあたるそうです。なお、団体の監視地域で年間50件ほどの行方不明者と捜査依頼があり、現在、140名の不明者、昨年にインド全体に連れ去られ、救出された少女は30人、ほぼ全員が家族の元でしっかり暮らしているそうです。しかし、一度汚名を着せられた少女が元の家族のところ、村に戻るには、家族や村の住民の理解が必要であり、この団体では啓蒙活動を村々で積極的に行っています。また、被害者少女の結婚や自立のための仕事のサポート等もしています。
 海外の支援金を目当てに社会活動をしている団体が多いインドで、このような真面目な団体は珍しい方です。今回、この団体に20万円ほどの資金支援をしました。年間600万円程度で職員20人、監視員5000人を抱えて、積極的な活動をしているこの団体にとって、20万円は大きな寄付額です。今後も天徳寺と連携していきたいと、日本に私が帰ってきた後にメールがありました。

3. ロヒンギャ難民への緊急食糧支援

行くあてもない路上難民
行くあてもない路上難民

 9月にミャンマーの山間部に住むイスラム教徒であるロヒンギャ少数民族が、ミャンマー軍により国境を接するバングラディシュに「民族浄化」のため強制的に追い出される事態が大規模に起こりました。村は焼かれ、死傷者も多くいます。10月までの2か月間に約60万人が現在、国境沿いに避難しています。しかしバングラディシュ政府は支援を始めていません。また国際支援を要請もしていないため、ユニセフや赤十字などの海外の支援団体は本格的な緊急支援活動を始められません。着の身着のままで逃げてきた難民は子どもから病気や飢餓で亡くなり始めています。

応急のビニールテントがあちこちに
応急のビニールテントがあちこちに

 多分、国連を中心にバングラデッシュ政府を動かして、大規模な支援体制が来年には整うと思われますが、現在は命を落とす子や、女子の強制売春、男子の強制労働、臓器売買のために親を殺された子どもが誘拐されることが起り始めています。そのために、バングラディシュ国内で社会活動を行う数団体が国内の篤志家の寄付で食糧支援を始めました。

栄養不足の赤ちゃん
栄養不足の赤ちゃん

 天徳寺では浜松の静岡文化芸術大学の学生が結成したロヒンギャ難民を支援する会を通じて、現地の団体に特に支援の届かない地域、子供を中心に食料配布を依頼することにしました。米、サトウキビ、幼児用クッキーを約1000人(1か月分)に配布します。費用は30万円。 
 今後、可能であれば多数生まれた孤児が人身売買の道具として連れ去られないように、現地団体に監視をしてもらえないかどうか相談をする予定です。

現地住民による食料支援
現地住民による食料支援
静岡文化芸術大学の学生の難民報告会
静岡文化芸術大学の学生の難民報告会