平成30年度上半期 天徳寺慈しみ基金活動報告

 2月~3月にかけて住職がインドを訪問し、事業地の視察と、新たな支援事業の検討をしてきました。

スラム調査

 インド・ニューデリーにはスラムと呼ばれる貧困者の過密住宅街があちこちに点在しています。その中の一つを訪問しました。訪問したスラムでは現地の団体による青空教室が開催されて、小学校に行く前の補習授業が行われていました。このような授業は各地のスラムで行われており、貧しくても学校には行くことが大切と認識されているようです。訪問したスラムでもほとんどの子どもが小学校、中学校に通っていました。天徳寺が支援している農村では就学意識が乏しく、小学校に行かずに休みがちな子どもが多いのが現状ですが、ニューデリーのような都市では、教育が将来の生活に役立つという意識が貧困層にも浸透しているようです。

 

スラムでの青空教室
スラムでの青空教室
スラム地区の様子
スラム地区の様子

スラムに住めない極貧層の調査

 人口流入が激しいニューデリーの地価は高く、スラムでは6畳ほどの一部屋を借りるにも、日本円で1万円はかかります。そのため仕事を探しに家族で農村から移住してきた人たちは、当面、路上で生活するか、あるいは家賃のかからないゴミ置き場で小屋を建てて生活することになります。訪問したゴミ置き場で生活する家族は、集められたゴミからお金に代わるものを売って生活していました。このゴミ置き場で生活している家族は30件ほどありましたが、どの家族の子どもも中学校までは通っていました。親に聞いてみると、やはり教育の大切さを認識しています。

 

 以上の都会での教育の現状からみて、天徳寺では教育支援を今まで通り、農村に限ることにしていく予定です。

ゴミ置き場
ゴミ置き場
ゴミ置き場で暮らす家族
ゴミ置き場で暮らす家族

ストリートチルドレン調査

 このたび、発展するインドの都市での貧困、教育問題を調査しました。インドの首都ニューデリーの路上で物乞いで生活する子供(ストリートチルドレン)の現在を知るために、活動している現地の団体「サラム・バラック・トラスト」を訪問しました。

職員のアマン君。
職員のアマン君。

2500万人の人口があるニューデリー(東京23区と同じ人口密度)には現在10万人程度のストリートチルドレンがいますが、その多くは親子で路上で生活しています。この団体はその中で特に親がいない子供を救助しています。具体的には定期的に市街を見回り、子供だけで生活している子供を見つけると、子供の希望に沿うようにして、さまざまな支援をしています。私がこの団体を訪問し、案内してくれた団体の職員(アマンくん)はもともと、ストリートチルドレンだったそうです。年齢は17歳、5才の時に誰かに駅に放置されたらしいと彼は記憶していますが、家族の記憶がないそうです。この団体の職員に多くの元ストリートチルドレンがいるそうです。この団体は海外からの多くの支援で運営されています。現在、このような団体がいくつかニューデリーで活動しており、以前よりストリートチルドレンは支援を受けやすくなっているそうです。また、政府の政策で、警察が定期的に親のいないストリートチルドレンを探して、施設に収容しているそうで、その両面のために現在では路上で生活する親のいないストリートチルドレンは減ってきたそうです。

インド困窮農村児童支援事業

縫製トレーニング事業 ラフ―ルナガール村とモルタル村

ラフールナガール村での卒業生
ラフールナガール村での卒業生

 今年3月で第2期生の2年間の縫製トレーニングが終了しました。ラフ―ルナガール村の修了生は16人、モルタル村の修了生は5人です。これで昨年の修了生を合わせて50人の女子が縫製トレーニングを受けたことになりました。昨年同様に修了生にはそれぞれ1台の足踏みミシンが修了記念として贈与されました。
 これからは各家で家族や親せきの洋服を縫うことになるでしょう。縫製で役に立つということは、小学校や中学校を卒業できなかった彼女たちが家族や、今後結婚していく先の夫の家族の中で一目置いてもらえることにつながります。今後は時々、布や糸を配布をしながら、ミシンの利用状況を把握していこうと考えていますし、ミシンの仕事が出来る方法を検討していくことになります。

モルタル村での卒業生
モルタル村での卒業生
卒業生にミシンの配布
卒業生にミシンの配布
生徒にTシャツの配布
生徒にTシャツの配布

Tシャツのご支援ありがとうございました。

 前回、少年にTシャツ販売を依頼しました。今回半年後ですが、売れたのかどうか確認しましたが、4分の1程度(20着)を近所のお祭りの際に売ったということです。ただ、本人が思った以上に大変だったそうです(その詳しい内容は教えてくれませんでしたが、買い手とのトラブルもあったようです)
 今後、Tシャツ販売については、検討を要するようです。少年のTシャツの在庫はまだあるということなので、今回持ち込んだ750枚のTシャツは縫製教室の生徒に配り、Tシャツを販売して布代、糸代を工面出来るように指導してきました。

マンゴー植林事業

 マンゴーを植林するプロジェクトは始めてから6年になりました。初年度から3年間は植林に意欲がある家庭約20件にマンゴーの苗木を市場で購入して配布しましたが、ほとんど枯れるか、牛等に食べられてしまいました。

 それでも2~3件はマンゴーの苗木が大きくなりだしています。あと5年後には実り始めることでしょう。その時にほかの村民も、マンゴーの植林を真剣に考えるようになるのではないかと期待しています。今回はマンゴーの苗木を市場で買うのではなく、村で育ててもらい、村全体に配布しました。そうすれば苗木の購入代がかからず、またマンゴーの苗を村内で育てることに目を向けさせることもできます。

 

 今後は配布したマンゴ-の苗木がどう育てられるか、経過を観察することになります。なお、現在、試験的に近隣から収穫したマンゴ-を天日干しにして、ドライマンゴーを制作してもらっています。うまくいけば来年夏に皆さまにも試食していただけるかもしれません。

育ったマンゴーの苗
育ったマンゴーの苗
マンゴーの苗の配布
マンゴーの苗の配布

新たな活動を目指して

プリマメッタ小学校
プリマメッタ小学校

 現在、支援しているモルタル村、ラフールナガール村に行くために、毎回ガンジス川の支流を渡るのですが、渡る手前の道沿いに私立の小さな小学校(プリマメッタ小学校)があることに気づきました。調べてみたら、その小学校を運営しているのが、一度仏門に入った経験を持つインド人青年(アヌプさん)と、その妻の日本人(ゆうこさん)でした。その小学校がある村はスジャータと呼ばれ、以前、天徳寺の職員が現地に駐在していた際に、教育事情を調べてもらった村でもありました。

 その時には、その村は観光客も訪れ、また海外の支援で運営されている1000人の生徒がいる大きな私立小学校もあり、また、インドのカースト制度では、現在、天徳寺が支援している村よりもランクが上であるということから、支援事業を行わないと結論していましたが、せっかく、現地の教育に携わる日本人と出会えましたから、詳しく話を聞きました。確かに小学校、中学校にほとんどの子どもが通い、また生活もなんとかやっていけるとのこと。但し、現在プリマメッタ小学校に通う子供たちは、スジャータ村のはずれにある村の出身であり、スジャータ村の私立教育の恩恵を受けていなく、劣悪な教育環境の公立小学校、中学校に通っていたため、プリマメッタ小学校を開校したとのことです。
 小学校の運営は寄付と二人の生活費から切り崩して工面しているそうです。二人は年に数回日本に出向き、働いて運営費を稼いでいるそうです。給食費を無償にしているのが負担が大きいそうですが、貧しい環境の子供たちは栄養状態も悪いので、給食の無償化はかかせないそうです。

小学校の授業の様子
小学校の授業の様子
給食の様子
給食の様子

 プリマメッタ小学校に通う子供の家を数軒案内してもらいました。その村で足が化膿して切断した16歳の女の子と会いました。どうも術後が良くなく、現在切断した足が3倍程度に腫れ上がっていました。家族はお金がかかるため、放置しているので、ゆうこさんも危惧していました。
 プリマメッタ小学校のことをいろいろ聞いてみると、毎年生徒約60人に制服を作って無償提供しているとのこと。今までは町の縫製屋に頼んでいたということで、それなら、天徳寺が縫製トレーニングをした少女の中で上手な子を2人選び、その子に縫製を仕事として依頼することにしました。まだ町の縫製屋さんの技術には及ばないので、縫製トレーニングの先生に指導をしてもらいながらですが、現在、その事業が進んでいます。この小学校の共同運営者である日本人(ゆうこさん)が近くでサポートして頂けるのがありがたいです。縫製トレーニングが実を結ぶ機会が増えることを願っています。 また、現在は天徳寺の職員がインドに駐在していませんから、ゆうこさんに天徳寺の支援している村のサポートをお願いしようかと検討中です。

足を腫らした少女
足を腫らした少女
プリマメッタ小学校の子供とゆうこさん。
プリマメッタ小学校の子供とゆうこさん。

 なお、ゆうこさんは先日「こんなところに日本人」というテレビ番組で紹介されました。